カーブアウトとは?
M&Aにおけるカーブアウトとは?
カーブアウト(ふりがな: かーぶあうと、英語: Carve-Out、仏語: Séparation)とは、企業の一部事業や部門を分離し、その分離された事業の株式の一部を新たに上場する、または売却するM&Aの手法を指します。親会社は、その事業の支配権を一定程度維持しながら、外部投資家に株式を売却することが多いです。カーブアウトは、企業が資金調達を行うと同時に、事業の成長を促進する手段として活用されます。
カーブアウトの基本的な役割
カーブアウトは、企業が一部の事業を切り離し、独立した企業として運営させるための手法です。親会社は、カーブアウトによって新たに設立された企業の株式を売却し、資金調達を行う一方で、その事業の完全な支配権を失わないケースが一般的です。これにより、親会社は成長が期待される事業の価値を引き出し、他の事業に集中することが可能となります。
カーブアウトは、次のような目的で実施されます:
- 資金調達:カーブアウトを通じて事業の一部を売却することで、親会社は多額の資金を調達でき、その資金を他の事業の成長や借入金の返済に充てることができます。
- 事業価値の解放:特定の事業が親会社の中で適切に評価されていない場合、カーブアウトによってその事業を独立させることで、市場での価値を最大化することが可能です。
- 経営効率の向上:事業が分離されることで、各事業が独立した運営を行い、それぞれの強みを活かした経営が実現します。
カーブアウトの歴史と起源
カーブアウトの手法は、1980年代にアメリカの大企業で活用され始めました。この時期、多くの企業は、多様化しすぎた事業ポートフォリオを整理し、より集中した事業運営を目指すようになりました。その結果、成長が見込まれる一部の事業をカーブアウトすることで、資金調達や経営資源の再配分が行われました。
この手法は、1990年代以降、特にテクノロジーや製薬業界などで広く採用されるようになり、今日ではグローバルなM&A戦略の一環として一般的に利用されています。大企業が事業の一部を上場させることにより、事業部門の価値を独立して評価し、投資家の注目を集めることができるため、資金調達の手段としても非常に有効です。
現在のカーブアウトの使われ方
現在、カーブアウトは大規模企業にとって重要な戦略ツールとなっており、さまざまな業界で活用されています。企業が経営資源を効率的に集中させ、特定の事業を成長させるための手段として機能しています。
1. カーブアウトとIPO(新規株式公開)
カーブアウトを実施する際、切り離された事業は通常、IPO(新規株式公開)を行い、独立した企業として市場に上場されます。このプロセスにより、外部投資家からの資金を調達することができ、親会社もその事業の一部を保持しながら、事業価値の向上を目指します。
2. カーブアウトとスピンオフとの違い
カーブアウトと似た手法にスピンオフがありますが、両者は異なる戦略です。スピンオフでは、親会社が完全にその事業の株式を分配し、株主に移転します。一方、カーブアウトでは、親会社が一部の株式を保有し続け、資金調達を行うことが特徴です。これにより、親会社は売却した資金を他の事業や成長戦略に利用できるという利点があります。
3. カーブアウトのメリットとリスク
カーブアウトのメリットは、資金調達や事業価値の解放、経営の効率化が挙げられます。しかし、一方でカーブアウトにはリスクも伴います。新たに独立した企業は、親会社のサポートを部分的に失うことになるため、独立して成功するためには強固な経営基盤が必要です。また、事業が分離されることで、親会社と新会社との間で業務プロセスの調整が必要になることもあります。
カーブアウトの未来
カーブアウトは、今後もM&Aにおける有力な手法として活用され続けると予想されます。特に、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、テクノロジー企業が新たな技術やサービスをカーブアウトするケースが増加しています。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも、持続可能な事業運営を目指す企業が特定の部門を分離し、環境に配慮した経営を推進するための資金調達を行うケースも出てきています。
今後のカーブアウトは、単なる資金調達手段としてだけでなく、企業の成長戦略や市場での地位向上を実現するための重要な一手段となるでしょう。また、親会社と新たに独立した企業の間でのシナジー効果を追求するため、両者の協力体制をどのように構築するかが成功のカギとなります。