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M&Aにおけるレギュラトリーアプローバルとは?

レギュラトリーアプローバル(ふりがな: れぎゅらとりーあぷろーばる、英語: Regulatory Approval、仏語: Approbation Réglementaire)とは、企業の合併や買収(M&A)を進める際に、各国の規制当局や関連機関から事前に取得しなければならない許可や承認のことを指します。特に競争法や独占禁止法など、各国の法律に基づき取引の影響を審査し、公正な競争が維持されるかを確認するために行われます。

レギュラトリーアプローバルの基本的な役割

レギュラトリーアプローバルは、企業が合併や買収を行う際、取引が市場に与える影響を評価し、競争の公正性を保つために規制当局から承認を得るプロセスです。大規模なM&A取引が市場における支配力を強化し、競争を阻害する可能性がある場合、当局が取引を審査し、承認の可否を決定します。

レギュラトリーアプローバルは、通常以下の目的で行われます:

  • 競争の維持:市場での独占や寡占を防ぎ、公正な競争を確保すること。
  • 消費者保護:競争の減少による価格上昇やサービスの質の低下を防止し、消費者の利益を守ること。
  • 経済の安定化:重要な産業や資源を持つ企業の買収が経済全体に悪影響を及ぼさないようにすること。

規制当局は、これらの要素を評価し、企業が市場支配力を過度に強めないかを確認します。取引が競争を阻害すると判断された場合、条件付きで承認されたり、場合によっては取引が完全に拒否されることもあります。

レギュラトリーアプローバルの歴史と起源

レギュラトリーアプローバルの概念は、19世紀末のアメリカで成立した「シャーマン法」にまで遡ります。この法律は、独占やカルテルの形成を防ぐために制定され、企業が市場で過度な支配力を持つことを防止する目的がありました。特に、企業が合併や買収によって競争を減少させ、市場を独占しようとする動きに対して厳しく規制を行うため、競争当局による事前の承認が求められるようになりました。

その後、20世紀に入ると、アメリカやヨーロッパ各国で競争法(独占禁止法)や規制が強化され、特に大規模なM&A取引に対する審査プロセスが整備されました。これにより、企業が買収や合併を行う前に、取引が市場に与える影響を評価するために事前承認を求める制度が確立されました。

近年では、グローバル市場におけるM&Aの増加に伴い、複数の国や地域の規制当局が連携して取引を審査するケースも増えています。これにより、国際的な取引においても、各国の競争法や規制が遵守されることが確保されています。

現在のレギュラトリーアプローバルの使われ方

現在、レギュラトリーアプローバルは、特に大規模なM&A取引において、不可欠なプロセスとなっています。企業が合併や買収を行う際には、規制当局から事前承認を得ることが必要であり、その過程で競争法の審査が行われます。以下は、現在のレギュラトリーアプローバルの具体的な使われ方です。

1. 独占禁止法の審査

M&A取引が競争法に基づいて市場の競争に与える影響が審査されます。取引後に企業が市場で過度な支配力を持つことがないか、消費者の選択肢が制限されないかを規制当局が評価します。例えば、アメリカの連邦取引委員会(FTC)や欧州委員会などが、合併による市場シェアの変化を詳細に分析し、必要に応じて取引条件の変更や一部の資産売却を要求することがあります。

2. グローバル取引における多国間審査

国際的なM&A取引では、複数の国での承認が必要です。企業が異なる国の規制当局から承認を得るためには、それぞれの国の法律に従って審査をクリアしなければなりません。例えば、アメリカ、EU、中国、日本などの競争当局が協力し、取引がグローバルな競争に与える影響を総合的に評価するケースが増えています。

3. 業界特有の規制

特定の業界では、競争法だけでなく、産業ごとに特有の規制が存在します。例えば、金融、エネルギー、通信業界などでは、規制当局が特別な承認を行い、取引がその業界全体に与える影響を評価します。このため、企業は業界ごとの規制にも対応し、適切な審査プロセスを経る必要があります。

レギュラトリーアプローバルの未来

今後も、レギュラトリーアプローバルはM&Aの成否を左右する重要な要素であり続けるでしょう。特に、デジタルプラットフォーム企業の台頭や、テクノロジー企業による大型買収の増加に伴い、規制当局はこれらの取引が市場に与える影響を厳しく監視しています。デジタル市場では、従来の業界とは異なる競争の形態が見られるため、規制当局がどのように審査基準を適用していくかが注目されています。

また、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から、企業が持続可能なビジネスモデルを追求する中で、M&A取引が社会的・環境的にどのような影響を与えるかを評価する規制の強化も予想されます。これにより、レギュラトリーアプローバルの範囲が拡大し、従来の競争法に加えて、環境や社会的影響に基づく審査も重要な要素となるでしょう。

結論として、レギュラトリーアプローバルはM&Aにおいて市場の競争を保護し、消費者利益を守るために欠かせないプロセスです。企業が大規模な取引を進める際には、各国の規制当局と緊密に連携し、適切な審査プロセスをクリアすることが求められます。



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